障がい者のテレワーク雇用の課題とは?障がい者雇用の可能性を広げよう

  • カテゴリ: 採用
  • 公開日: 2024/4/8

働き方改革により広まったテレワークは、身体障害や精神障害のため通勤やオフィス勤務が困難になった方にとって、非常にメリットのある勤務形態と言えます。

また企業にとっても障がい者のテレワーク雇用は、障がい者雇用率が上がるだけでなく、企業の人材不足の解決や生産性向上にもつながる取り組みと言えるでしょう。


この記事では障がい者のテレワーク雇用の現状と課題、その課題解決のためのヒントや、障がい者を雇用する際の面談ポイントについて解説していきます。

1. 障がい者テレワーク雇用の現状


現在、従業員の規模が一定数以上の企業において、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にすることが義務付けられています。


2023年12月時点で民間企業における法定雇用率は2.3%となっていますが、今後2026年中をめどに段階的に2.7%まで引き上げる方針を厚生労働省が発表しました。

これにより今後はますます企業側の障がい者雇用促進が不可欠となるでしょう。


障がい者のテレワーク雇用については、平成31年に実施された状況アンケートでは約2500社の企業のうち、障がい者のテレワーク雇用を行っている企業はわずか15社(2%)とごく一部の企業にとどまっている状態でした。


しかし最近では、新型コロナ禍の感染拡大防止や障がい者の特性、労働環境改善から障がい者のテレワークを促進する企業が増えており、雇用している障がい者のほとんどがテレワーク業務をしているという企業も出てきているのです。

企業が障がい者のテレワーク雇用を推進することは、法定雇用率をクリアする手段となるだけでなく、今後の人員不足や能力のある優秀な人材確保の手段にもなり得るでしょう。


参考: 厚生労働省「在宅就業障害者支援ノ ウ ハ ウ ブ ッ ク

2. 障がい者のテレワーク雇用の課題とは


障がい者のテレワーク雇用のメリットについて理解していても、実際に取り入れるとなると不安を感じる採用担当者も少なくないでしょう。

障がい者がテレワークを行う上での課題は大きく分けて3つ考えられます。

2-1. ①業務内容の課題

テレワークは1人で業務を遂行することも多いため「障がいを持つ従業員ができる作業が限られてしまうのでは」という懸念です。

またオフィスワークと違い、障がい者のそばで様子を見ながら業務のサポートができないため、どのようにマネジメントを行ったらよいかわからないという問題もあげられます。

2-2. ②労働管理の課題

勤務の状況や健康状態の確認・把握、不安や問題発生時の対応方法など、障がい者の労働管理をどうするべきかという問題も出てくるでしょう。

これは障がい者に限ったことではなく、テレワークでは労働管理の方法やルールをあいまいにしておくと、作業効率低下や怠ける社員が出てくる恐れがあり、企業にとって大きな問題となり得るのです。

2-3. ③コミュニケーションの課題

テレワークでは部署やチーム、社員同士の関係が重要となり、対面で話ができない分、ZoomやGoogleMeetなどWEBツールを使用してコンタクトを取っていく必要があります。

対面で指示を出すのとは違い、業務の報告・連絡・相談のやりとりを障がいを持つ方とどのように進めたらよいか、コミュニケーションがうまくできるか不安に感じるという意見も多く見られます。

3. テレワーク雇用の不安をなくすために


障がい者のテレワーク雇用をするためには、これまでの業務のやり方の見直しなど、企業側の課題を解決していく必要があります。

3-1. ①業務の切り出しを行う

「テレワークにできる業務がない」と思っていても業務の切り出しをすることで、テレワークでも可能な作業を割り出すことができます。


まずは障がい者の配属する部署を決め、その部署にはどのような業務があるのか洗い出していきます。

さらに細分化させた業務の中から障がいを持つ方でもできる作業はどれか、それはテレワークにしても問題はないかを見極めていきましょう。


障がい者が取り組みやすい業務としては、

 ・難易度が低い業務

 ・納期が厳しくない業務

 ・専門的な知識が必要ない業務

 ・覚えたら何度でも繰り返しできる業務

 ・本人の意思決定の必要がない業務

などがあげられます。


業務の切り出しは採用活動をする前に行うとよいでしょう。

どの部署の、どのような業務をやってもらいたいのか具体的に提示することで、その能力に応じた人材が見つけやすく、入社後のミスマッチも減らすことができます。

3-2. ②ツール活用による労働管理やコミュニケーションの解決

現在はさまざまなコミュニケーションツールがあり、テレワーク中でも密な連絡を取り合うことが可能となりました。

「決まった時間に連絡をする」など遠隔でのフォロー体勢を作り、情報の受発信ができる環境を整えることで労働者は安心して業務に打ち込むことができるのです。


また報告・連絡・相談をするツールは重要度によって使い分けをするなど、あらかじめルールを決めておくと良いでしょう。


障がいを持つ方とのコミュニケーションで大切なことは、その人が何に困っているのか、どんなサポートが必要なのかを具体的に知ることです。

事前にしっかり話し合いをしておくことが重要です。

3-3. ③専門家の手を借りる

障がい者の雇用では、専門知識を持つ外部機関と連携していくことも必要となります。

第3者の専門家に入ってもらうことで、障がい者と企業側に適切なアドバイスがもらえるでしょう。

何か問題があっても社内だけで解決しようとせず、専門家の手を上手に借りることが大切です。


参考:厚生労働省「障害者就業・生活支援センター」 「地域障害者職業センター

4. 障がい者のテレワーク業務について


作業の多様化により、専門的な知識がなくてもある程度のPCスキルがあればテレワークは誰でもできるようになりました。

実際に障がいを持つ方がテレワークでどのような業務を行っているのか、いくつか事例をご紹介します。


 ・資料作成/文章作成など事務に関連する軽作業

 ・経理/会計に関わる業務

 ・営業支援やスケジュール調整にかかる業務

 ・給与支給/精算事務にかかる業務

 ・システム開発/ソフト開発/プログラミング

 ・ネットワーク・サーバーシステムの管理/監督

 ・ホームページの企画/制作/管理

 ・CAD等設計図の作成

 ・キャリアアドバイザーとして障がい者のオンライン面談や模擬面接の指導


これらの業務を行っている方は、重度肢体障害や発達障害、精神障害など障がいのレベルは様々です。

障がいの状態や職務能力は人によって異なるため「障がい者」とひとくくりに考えずに、1人1人の職務能力を見て適切な業務を与えるようにしましょう。

5. 障がい者雇用、面談時に知っておくべきこととは?


障がいを持つ方の採用活動をするにあたり「どのような障がいを持つ方を募集したらよいのか」「面談では何を質問したらよいのか」など悩むことも多いと思います。

障がい者雇用の面談では、一般雇用と変わらず本人の就職意欲や業務の適性から合否を判断することになりますが、加えて障がいに関する情報を把握しておく必要があります。


自分の障害に対する理解度や働く意欲、テレワーク環境の有無、業務遂行に必要な能力があるのか、質問を通して見極めます。

また面談時に障がいについてどこまで聞いたら良いのか悩む人も少なくありません。

表現などに配慮する必要はありますが、過度な遠慮はしなくてよいので面接官がしっかり理解できるように確認をしていきましょう。

 ・障がいの症状や特性

 ・今までの経過、医療機関との繋がり

 ・医療機関への通院頻度、服用状況

 ・職場での障がいに対する配慮

 ・緊急時の対応法


テレワーク雇用の選考では、Web会議ツールなどを使用して面談をすることもありますが、選考過程で直接顔を合わせる機会を作ることも大切です。

障がいの状態の説明があっても画面で映し出される情報からでは、障がいの認識のずれが生じる場合もあります。可能であればお互いに会う機会を設けてみましょう。


また採用後は人事担当ではなく、配属部署の社員が研修や指導を行うことが多くなります。

採用してから慌てることがないように、社内で障がい者のテレワーク雇用についてしっかり理解してもらい、受け入れ体制を整えておきましょう。

6. まとめ

障がい者のテレワーク雇用には、企業側の障害に対する理解やその人の特性に適した業務に配属させてあげることが重要です。


たとえ障がいを持っていても、1人1人得意とするスキルは違います。

思い込みでこの仕事はできない、これはできると決めつけず、その人の特性を理解し、障がい者が働きやすい環境を整えていきましょう。