
障がい者のテレワーク雇用の課題とは?障がい者雇用の可能性を広げよう
- カテゴリ: その他テレワーク
- 公開日: 2023/7/3
新型コロナウイルスの流行に伴い、テレワークという新しい働き方が定着してきた近年。
障がい者雇用においても同じことが言えます。
時間や場所にとらわれず、通勤の必要もないテレワークは障がい者にこそ最も適した働き方であるとも言えるかもしれません。
では、実際に障がい者のテレワーク雇用を進めていく中でまず何を1番に考えるべきなのでしょうか?
現状を踏まえながら課題やメリットデメリット、障がい者を雇用する際に気を付けるべき点、今後の可能性について詳しく見ていきたいと思います。
1. 障がい者雇用におけるのテレワークの実態と課題
1-1. 障がい者のテレワーク雇用の実態
企業における障がい者のテレワーク雇用は年々増加傾向にあります。
2021年3月に障がい者雇用の法定雇用率が上昇し、民間企業の法定雇用率は2.3%となりました。
雇用すべき人数の底上げが起き、今までは義務を負わなかった企業の一部も障がい者を雇用する義務が発生することとなりました。
そこで注目されるようになったのが、障がい者雇用におけるテレワークの導入です。
実は障がい者のテレワーク雇用は、近年になって注目されるようになったわけではなく、1980年代から通勤負荷の軽減を目的に導入実験が行われており、2011年に策定された「テレワーク人口倍増アクションプラン」では、「障がい者雇用率向上」「在宅勤務による障がい者の業務効率向上」の効果をあげています。
ですが、国の後押しもありながら、その効果はあまり発揮されないままでした。
それが新型コロナウイルスの流行もあり、ここに来てまた再注目されるようになりました。
障がい者雇用の領域でもテレワークの活用に注目が集まり、一気に普及も進んでいます。
障がい者社員に実施した雇用施策としてテレワークの導入や在宅勤務を進めた企業は27.3%に及びます。
ただ、そうは言っても法定雇用率に定められた人数の障がい者を採用するのは難しく頭を悩ませる企業も少なくないようです。
1-2. 障がい者をテレワーク雇用する際の課題
障がい者をテレワークで雇用するとき、テレワークではこういう仕事しかできない、障がい者だからできる事が限られるという思い込みがよく見られます。
これだと特定の障がい者に偏った採用になりがちで、「業務の内容と障がいの特性がうまくいかない」「何の仕事をしてもらえばよいかわからない」といった課題が出てしまうことになりかねません。
その結果が離職率の増加や定着率の低下につながってしまいます。
テレワークに対する不安や課題を考えるとき、まずその原因や本質がどこにあるかを考えていくことが大切です。
テレワークに対する不安と障がい者自身への偏見や誤解、どちらについても社員の理解を深めることは不可欠です。
障がい者といっても、能力や特性には個性があり、働く意志や必要な手立ては異なってきます。
障がい者の多様性や個性を理解せず、一括りに人数だけを考え雇用すると後から様々な問題が出てくるでしょう。
業務に必要な能力と業務に向いている人材を見極めること、働き方に柔軟性を持たせることが大切になってきます。
2. 障がい者をテレワーク雇用するメリットとデメリット
2-1. 障がい者雇用をテレワーク化するメリット
これまで通勤がハードルとなり難しかった採用枠が、地域や障がいの重さに関係なく人材の幅を広げることができます。
テレワークで働く社員の通勤手当の削減にもつながります。
通勤時間の削減により生産性の向上が見込まれます。
オフィスの小規模化やバリアフリー化の必要がなくなり、経営コストの削減にもなります。
また、社会的に責任を果たすと共に、多様性のある会社を作ることができ企業全体の業務を見直すきっかけにもなります。
障がい者を雇用することで国からの助成金を受け取れるというメリットもあるでしょう。
一方で障がい者にとっても、障がいの有無にかかわらず一人ひとりが自分の希望や能力に合った仕事に従事し活躍できる機会が増えます。
通勤の必要がなくなることは、時間的・身体的・精神的負担を軽減することができます。
環境が整った自宅での仕事は、困難を回避しストレスなく働くことができます。
2-2. 障がい者雇用をテレワーク化するデメリット
オンライン上だけでは、同じ空間で働くよりコミュニケーションが取りづらいという点が挙げられますが、これは健常者においても同じことが言えます。
また慣れたプライベート空間での仕事は、プライベートと仕事の切り替えが難しいことも挙げられます。
雇用側も社員の抱える不安に気づきにくく、サポート体制が万全にできないことなどもあります。
これらは近年のIoTやツールの新加入よって、円滑なコミュニケーションが可能になりつつあり、障がい者が担うことのできる業務の幅も拡大してきています。
また、これまではマイナス面として受け取られていた障がいの特性を、突出したスキルとして活かせる強みに変えて、一般雇用よりも戦力になる人材の確保につなげることもできます。
3. 障がい者のテレワーク雇用の将来性
障がい者をテレワークで雇用するに当たり、新たにテレワークでできる業務を考えなければならない、障がいのレベル別に業務内容を構築しなければならないなどと思いがちですが、まずは「テレワーク用の仕事」という概念を変えていく必要があります。
今後、障がい者に限らずテレワークという働き方はこれまでにも増して注目されていくでしょう。
企業としても今ある業務の洗い出しから、テレワーク化できるようにやり方を変える必要があります。
業務の見直しは企業全体の生産効率を向上させるためにも大切なことであり、そのために必要なツールやシステムの構築も不可欠です。
そしてまずは、障がい者だからという偏見や思い込みを捨て、一人の人材としてどのような仕事が向いているか適性や可能性を知ることから始まります。
業務を見直し、細分化することは、必要な人材要件を定める際の基準にもなってきます。
そこから見えてくる人材や能力を知ることで、雇用する側とされる側のマッチングがうまくいくのではないかと思います。
テレワークで働く障がい者にとっても採用はゴールではなくスタートであり、企業にとっても長く定着し活躍できる人材が求められていきます。
また、障がい者の雇用に不安を抱える企業には、専門知識を有する支援機関と連携しながら採用を進めていくのも一つの方法です。
全国47都道府県に設置されている「地域障害者職業センター」や「障害者就業・生活支援センター」など様々な機関があります。
専門的な知識を持つ第三者機関に入ってもらい適切なアドバイスをしてもらうのもいいでしょう。
4. まとめ
ここまで障がい者がテレワークをする際の課題やメリットデメリットについてお話してきました。
障がい者のテレワーク雇用にはまだまだ多くの課題があります。
その一方でテレワーク雇用を進めることは、業務の見直しや働き方の改革といった雇用する側の意識改革にも役立ちます。
障がい者の能力や特性を知ること、その多様性を理解することで障がい者の働く場所作りとしてテレワーク雇用が広がっていくことが今後も期待されます。
雇用する会社にとっても、雇用される側の障がい者のどちらにとってもメリットのある新しい働き方の形の一つになることは間違いありません。
この記事が障がい者のテレワーク雇用を成功させるためのヒントになれば幸いです。