テレワーク中の特定支出控除について

  • カテゴリ: 査定・評価
  • 公開日: 2022/9/26
現在、たくさんの企業でオフィスで仕事に取り組むのではなく、自宅で仕事をするテレワークが主流となりました。

企業はテレワークが増えるにつれて、オフィスの光熱費や従業員の通勤費など様々なコストが削減できています。

会社としてはコストを削減できて嬉しい反面もありますが、従業員の間ではテレワーク中の光熱費やネットワーク環境の整備など予想外の出費も増えています。

従業員たちが仕事をする上で重要になる制度が「特定支出控除」です。

今回は「特定支出控除」の基礎知識からテレワークによってかかった経費申請の注意点まで詳しく解説します。

1. 特定支出控除とは


特定支出控除とは、業務を行うためにかかった経費を特定支出として所得金額から控除できる制度です。

この制度が新設された当初は申請することが非常に困難であったため、利用するサラリーマンはごくごく少数でした。

しかし、平成24年、28年に内容が見直され、適用範囲や対象項目が拡大されました。

制度の見直しが行われてからは、年間1500件近く申請されています。

サラリーマンの間でも徐々に利用する人が増えており、中小企業の経理担当者も知っておいたほうが良い制度でしょう。

2. 特定支出控除の対象となるものとは


特定支出控除の対象となる特定支出は6つです。

特定支出控除は、業務を行う上で発生した6つの特定支出を合算し、一定の計算により算出された金額が所得金額から控除されます。

控除を受けるためには確定申告で申請する必要があります。

6つの特定支出について、ひとつずつ解説していきます。


通勤費

自宅から会社に通勤するためにかかる費用は特定支出として申請できます。

通勤のための費用を自分で払っている場合や、会社から支給されている通勤費より通勤により多くのお金がかかっている場合は申請可能です。

電車やバスなどの公共交通機関だけではなく、マイカー通勤のガソリン代や高速道路料金なども対象です。

しかし、現在は通勤費を支給している企業が多いため、通勤費を経費として申請できる場合はごく少数でしょう。


 

研修費

研修費とは、業務に関係する技能やスキルを取得するための研修にかかった費用です。

研修を受けた本人が費用を支払った場合は、特定支出として会社に控除を申請することができます。

また、研修費は研修の受講料だけではなく、研修を受けるためにかかった交通費も対象です。


資格取得費

資格取得費とは、業務に関わりのある資格を取得するためにかかった費用です。

実際に資格が取得できなかった場合も申請することができます。

資格取得費についても受験地までの交通費や受験料は特定支出として申請可能です。

また、資格取得のために学校に通った場合は入学金以外の学費も対象となります。


勤務必要経費

勤務必要経費とは、業務を行うために必要になる経費のことで図書費、衣服費、交際費の3つがあります。

図書費は、仕事に関する専門書や定期刊行物の購入にかかる費用です。

衣服費は、勤務時に着用するための作業着やスーツの購入費などが対象です。

会社指定の制服などがなく、私服で仕事を行う場合は特定支出として申請することはできません。

交際費は、取引先や仕入先との接待費用や贈答費用が対象です。

社内の親睦会などは対象にはなりません。


転居費

転居費とは、転勤のためにかかった費用のことです。

転勤のために引越し業者に作業を依頼した場合、引越し費用は全額申請可能です。

引っ越しのために宿泊した場合の宿泊費も特定支出に含まれます。

また、生活用品の梱包材料の購入費や、運送時にかかった損害保険料も対象です。

ただし、転居時に個人の好みに合わせてリフォームを行った場合は、会社都合ではないので対象にはなりません。


帰宅旅費

帰宅旅費とは、単身赴任先から自宅へと帰省するためにかかった費用です。

帰省するために公共交通機関を利用した場合、移動のための交通費が対象となります。

ただし、グリーン車などの特別車両料金は対象外なのでご注意ください。

また、自家用車で帰省した場合はガソリン代や高速道路料金が対象です。

帰宅旅費として認められるのは、1ヵ月に4往復までです。

3. テレワークでかかった費用は特定支出控除対象?


テレワークでかかった費用は特定支出控除として認められるのでしょうか。

テレワークはオフィスの維持費や光熱費がかからなくなった代わりに、従業員への負担が増えています。

例えば、光熱費やコピー用紙などの消耗品費用、なかには新たにパソコンを購入したという方もいます。

会社の経費から支払われることはなく、従業員自らが肩代わりをしてお金を払っている場合が多いのも現状です。

テレワークでかかった費用を少しでも経費として申告することは可能なのでしょうか。


 

コロナによるテレワークに関しては基準が曖昧

コロナウイルス感染症の拡大によるテレワークの場合は基準が曖昧で、必ずしも特定支出控除で経費の申告をできるとは限りません。

特定支出として認められている費用は6つありますが、実際にテレワークで申請できそうな経費は「勤務必要経費」です。

勤務必要経費は図書費、衣服費、交際費ですが、この中には光熱費やパソコンなどの通信機器の購入費用は対象にはなりません。

さらに、在宅勤務中は私服での勤務を推奨している企業では、衣服費は申請できません。

現在の特定支出控除制度では、コロナ禍のテレワークを想定した内容ではないため基準が曖昧で、経費として認めるかは会社次第となってしまいます。


 

特定支出であると会社に認めてもらう必要がある

テレワークでかかった費用を特定支出控除として申請するためには、テレワーク費用は特定支出であると会社に認めてもらう必要があります。

会社によっては特定支出として認めてもらえることもありますので、認められた場合は証明書を発行してもらいましょう。

確定申告時に証明書を提出すれば特定支出控除を受けることができます。

4. 在宅勤務手当は課税対象になる?


在宅勤務手当とは、会社が従業員に対して在宅勤務で必要な設備などを揃えるために支給する手当です。

コロナ禍でテレワークが当たり前となった現在、在宅勤務手当が注目されています。

在宅勤務手当は課税の対象になるか解説していきます。


 

給与の一部とみなされるため課税対象

在宅勤務手当は給与の一部とみなされるため課税対象になります。

課税対象となる場合は、会社が毎月定額で従業員に手当を支給する場合です。

また、会社からテレワーク用にパソコンや机などが支給された場合も課税対象になります。

ただし、会社の備品が貸与された場合は非課税対象になります。


 

通信費や電気代は非課税対象となる

テレワークでかかった通信費や電気代は非課税対象です。

ただし、通信費や光熱費はプライベートや従業員以外の家族などの利用もあるので、業務利用分を計算して申告する必要があります。

計算方法は、国税庁の「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」にあります。

業務で使用した電気代などの算出方法は複雑であり、自分で計算して申告するのはハードルが高いと言われています。

5. まとめ


コロナ禍によるテレワークでは「特定支出控除」を適用できるかは曖昧です。

制度の利用自体がハードルが高く、利用したいと考えている方は会社と相談したほうが良いでしょう。

テレワークのための制度でもある「在宅勤務手当」では、従業員に必要な手当を行えます。

しかし、在宅勤務手当も支給方法によって課税対象になる場合や、非課税対象になる場合があるので注意が必要です。

これからテレワークを導入したいと考えている企業は、今回の記事を参考にしてみてください。