
テレワークの情報漏洩リスクと対策:情報システム担当者が知っておくべきポイント
- カテゴリ: テレワークのセキュリティ
- 公開日: 2025/6/9
テレワークの普及が加速する中で、働き方の自由度や生産性の向上といったメリットが注目されています。
しかしその一方で、「情報漏洩」という重大なリスクが顕在化してきました。
特に企業の機密情報や個人情報を扱う業種においては、セキュリティ対策が不十分なままテレワークを推進した場合、大きな損失につながる恐れがあります。
本記事では、テレワーク時代における情報漏洩リスクの本質を明らかにし、具体的なリスクの例、社内教育の必要性、ツールによる対策、万が一の対応方法まで、情報システム担当者が押さえておくべきポイントを総合的に解説します。
1. 情報漏洩リスクとは?

情報漏洩とは、企業の持つ機密情報・顧客情報・個人情報などが第三者に意図せず流出することを指します。
これにはサイバー攻撃だけでなく、内部不正、操作ミス、デバイスの紛失など多くの原因が含まれます。
テレワークの環境では、オフィスと違って物理的な監視やネットワーク制限が難しくなるため、従業員一人ひとりのセキュリティ意識やツールの整備が極めて重要になります。
情報漏洩が起きると、顧客からの信用失墜、損害賠償、法的責任など甚大な影響を企業が被る可能性があります。
2. 具体的なリスク例

以下に、テレワークにおける代表的な情報漏洩リスクの例を紹介します。
1.公共Wi-Fiの利用
カフェやコワーキングスペースなどで仕事をする際に、暗号化されていないフリーWi-Fiに接続してしまうケースは非常に危険です。通信内容が盗聴され、メールやクラウド上のデータ、ログイン情報が抜き取られる可能性があります。
2.私物PCやスマホの業務利用(シャドーIT)
企業が貸与した端末ではなく、個人のPCやスマートフォンで業務を行うシャドーITが問題視されています。ウイルス対策ソフトが未導入だったり、OSの更新が行われていなかったりすることも多く、情報漏洩のリスクが高まります。
3.家族や同居人による情報閲覧
自宅で作業する場合、モニター画面に表示された情報を家族や同居人が見てしまうリスクも存在します。特に営業資料や顧客リストなどが画面に映っていた場合、それが無意識のうちに漏洩のきっかけになることもあります。
4.ファイルの誤送信・共有設定ミス
メールやクラウドストレージでの誤送信・誤共有は、非常に多いヒューマンエラーのひとつです。特にリモート環境では、相手の名前やメールアドレスの見間違いによる誤送信が起きやすく、情報漏洩につながります。
3. 社内教育とルール化

情報漏洩を未然に防ぐには、システム面の対策だけでは不十分です。
最も重要なのは、「情報を守る意識」を従業員一人ひとりに持たせること。
そのためには、継続的な社内教育と明文化されたルールの整備が欠かせません。
1.セキュリティ研修の実施
定期的なセキュリティ研修を実施し、リスクの認識や事例共有、ツールの使い方などを全社員に教育します。オンライン研修でも十分効果があります。
2.情報セキュリティポリシーの整備
テレワーク時の情報管理に関する明文化された社内規定を整備し、就業規則やマニュアルに明記して周知徹底を図ります。例:・公共Wi-Fi使用の禁止
・私物端末での業務利用制限
・デバイスのロック義務
・データの持ち出し制限
3.インシデント報告体制の整備
万が一情報漏洩やその恐れが発生した場合に、すぐ報告・対処ができるよう、社内窓口と手順の明確化も必要です。4. ツール導入による対策

テレワークにおいては、ツールの活用がセキュリティ対策のカギを握ります。
以下に代表的な導入推奨ツールを紹介します。
・VPN(仮想プライベートネットワーク)
VPNを使うことで、外部ネットワークからでも安全に社内ネットワークへアクセスできます。通信内容は暗号化されるため、盗聴や改ざんのリスクを大幅に軽減できます。
・EDR(Endpoint Detection and Response)
エンドポイント(端末)をリアルタイムで監視・解析し、異常な動作や不審な通信を検知して自動で対応する次世代セキュリティソリューションです。・DLP(Data Loss Prevention)ツール
DLPは、機密データの外部持ち出しや不適切な共有を自動検出・ブロックするツールで、メール添付やUSB保存などの操作を制限できます。・クラウドストレージの権限設定
Google WorkspaceやMicrosoft 365などのクラウドストレージを利用する際は、共有リンクの期限設定やアクセス権限の細分化を徹底することで、不要な閲覧や漏洩を防げます。5. 万が一の対応策

どれだけ対策を講じていても、ヒューマンエラーや高度な攻撃により情報漏洩が発生する可能性はゼロではありません。
そのため、インシデント発生時の対応体制とフローをあらかじめ準備しておくことが重要です。
・初動対応:社内報告と影響範囲の特定
情報漏洩が発覚した際は、まず関係部署(情報システム部門・法務部・経営層)へ速やかに報告し、どの情報が漏れたのか、どこまで影響が及ぶかを調査します。・外部への連絡と公表
顧客情報が流出した場合は、個別連絡やウェブサイト上での公表が求められるケースもあります。また、プライバシーマークやISO 27001などの認証を受けている企業は、監督官庁や認定機関への報告義務も発生します。
・再発防止策の立案と実行
原因を徹底的に分析し、同様の事故が起きないようにルールやシステムの見直し、再教育の実施が必要です。被害の最小化だけでなく、信頼回復の観点でも重要なプロセスです。
6. まとめ
テレワークの利便性が広がる一方で、情報漏洩リスクも日々進化しています。
特に情報システム担当者は、「利便性とセキュリティのバランス」を常に意識し、全社的なガイドライン策定とツール導入、教育体制の整備を推進していく必要があります。
今後、ハイブリッドワークやフルリモート勤務が当たり前になる時代を見据え、セキュアで柔軟な働き方を実現するための環境整備は、企業にとって競争力そのものとなるでしょう。