
テレワークのセキュリティリスクと対策
- カテゴリ: テレワークのセキュリティ
- 公開日: 2025/7/7
テレワークが当たり前になった今、どこからでも働ける便利さの一方で、「セキュリティが心配」という声も増えています。実際、自宅のWi-Fiを使ったり、外出先から会社のシステムにアクセスしたりすることで、これまでなかったようなリスクが生まれています。
「大切な情報が外に漏れてしまったらどうしよう」
「サイバー攻撃の被害にあったら…」
そんな不安を感じている情報システム部門の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、テレワークにひそむセキュリティリスクと、それに対する具体的な対策について、できるだけわかりやすくご紹介します。自社の状況を見直すヒントとして、ぜひ参考にしてください。
1. テレワークの主なセキュリティリスク

主なリスク例:
・自宅や公衆Wi-Fiを使うことでの通信リスク
・私物端末(BYOD)利用によるセキュリティ低下
・情報の持ち出しやクラウド利用による漏洩リスク
・社員のセキュリティ意識のばらつき
テレワークでは、会社以外の場所で働くため、どうしてもセキュリティの弱い環境になりがちです。たとえば、自宅のWi-Fiが暗号化されていなかったり、カフェなどの公衆Wi-Fiを使ったりすると、通信内容が盗み見られるおそれがあります。
また、私物のパソコンやスマートフォンで仕事をする場合(いわゆるBYOD)もリスクになります。ウイルス対策ソフトが入っていない、OSの更新がされていない、家族と共有しているなど、会社の機器よりも安全性が低いケースが多いからです。
さらに、USBメモリに仕事のファイルを入れて持ち出したり、個人のクラウドサービスにアップロードしたりすることで、うっかり情報を外部に流出させてしまうこともあります。こうした「ちょっとした油断」が、会社に大きな被害をもたらすこともあるのです。
【実例1】
社員が個人のクラウドストレージに業務データをアップロードしてしまい、外部から誰でもアクセスできる状態になっていた。気づかずに数週間放置された結果、大量の個人情報が流出し、企業として謝罪と対応に追われた。
【実例2】
テレワーク中の社員が会社支給のノートパソコンを外で紛失し、パスワード保護もされていなかったため、内部資料が第三者に渡ってしまった。
2. 情報漏洩防止策

具体的な対策:
・ファイルの暗号化とパスワード設定
・紛失時の遠隔ロック・ワイプ機能の導入
・クラウドストレージのアクセス制限と共有期限の設定
・メール誤送信防止ツールの活用
テレワークで情報を守るには、いくつかの基本的な対策をしっかり行うことが大切です。まず、ファイルをパスワード付きで暗号化し、万が一誰かに見られても内容がわからないようにしましょう。さらに、ノートパソコンやスマートフォンをなくした場合に備えて、遠隔操作でデータを消せる機能(リモートワイプ)を設定しておくと安心です。
社内のファイルを共有する際は、個人のクラウドではなく、会社で管理しているクラウドサービスを使いましょう。共有するときは、アクセスできる人を制限し、共有期限をつけるのも有効です。
たとえば、ある会社では「ファイル共有リンクは1週間で自動で切れるように設定する」といったルールを設けて、うっかり長く公開し続けてしまうことを防いでいます。ちょっとした設定の工夫で、大きなリスクを減らせるのです。
3. VPN・ゼロトラスト導入ft

ポイント:
・VPNで通信を暗号化して安全に
・ゼロトラストは「誰も信じない」を基本とした仕組み
・多要素認証や端末の状態チェックが重要
・VPNとゼロトラストの併用も効果的
テレワークでは、自宅や外出先から会社のシステムにアクセスする必要があります。そのときに重要なのが「VPN(仮想専用線)」という仕組みです。VPNを使えば、通信が暗号化されるので、外部から盗み見られる心配が少なくなります。
ただ、VPNだけでは防げない攻撃も増えてきています。たとえば、パスワードが漏れてしまった場合、悪意のある人がVPNを使って会社に入り込む可能性もあります。そこで、最近注目されているのが「ゼロトラスト」という考え方です。
ゼロトラストは「誰も信じない」が基本。社内ネットワークにいる人でも、毎回しっかり本人確認をし、端末の安全もチェックします。たとえば、ある企業では「会社支給のパソコンで、ウイルス対策が有効になっていないと社内システムに入れない」といったルールを設けています。
VPNとゼロトラストは組み合わせることで、より強力なセキュリティ対策になります。
4. 従業員教育の重要性

取り組むべきこと:
・社員全員に最低限のセキュリティ知識を
・フィッシングメールやパスワード管理の研修
・トラブル時の報告ルールの周知
・定期的な教育で意識を維持
どんなに技術的な対策をしても、それを使う人の知識や意識が低ければ意味がありません。実際、情報漏洩の多くは「メールの送り間違い」や「怪しいリンクをクリックした」といった人のミスが原因です。
たとえば、ある社員が、偽のメールに騙されてログイン情報を入力してしまい、大切なシステムに第三者が侵入してしまったケースもあります。こうした被害を防ぐには、社員一人ひとりがセキュリティに対する正しい知識を持つことが大切です。
そのためには、定期的な研修やeラーニングがおすすめです。短い時間でもいいので、フィッシングメールの見分け方、強いパスワードの作り方、何かあったときの報告方法などを学ぶ機会をつくりましょう。
システム担当部門から、テスト用の偽メールを全社員へ配信し、どれだけの人が偽メールを開くか試してみるのも効果的です。
そこで得られた統計を、社員教育で紹介することで、自分たちの意識の程度がわかり、より危機感を高めることができます。
「全社員が同じ意識を持つこと」こそ、もっとも効果のあるセキュリティ対策です。
5. まとめ:安心してテレワークを続けるために
押さえておきたいこと:
・技術と教育の両面からの対策が必要
・できることから段階的に取り組む
・社員全員で「守る意識」を持つことが大切
テレワークを安全に続けるには、「何を守るべきか」をはっきりさせて、順番に取り組んでいくことが大切です。いきなり完璧を目指す必要はありません。まずは、今すぐできることから一歩ずつ始めてみましょう。
1.最初に取り組みたいのは、技術的な基本対策です
たとえば、
・ファイルの暗号化
・パスワード管理のルール作り
・VPNの導入
これらは比較的すぐに対応でき、効果も大きいポイントです。
2.次に、社内のクラウドや端末管理の見直しをしましょう
誰が、どこから、どんな端末でアクセスしているかを把握できる仕組みを整えることが、リスクの早期発見にもつながります。ゼロトラストの考え方を少しずつ取り入れるのもおすすめです。
3.最後に、忘れてはならないのが社員教育です
技術だけでは守れないからこそ、「フィッシングメールに注意しよう」「何かあったらすぐ報告しよう」「怪しいと思ったらさわらない」という意識をみんなで共有することが、トラブルを防ぐ大きな力になります。
テレワークの安心は、一人の努力ではつくれません。小さな対策の積み重ねが、大きなリスクを防ぐカギになります。今日からできることをひとつ、ぜひ実践してみてください。