テレワーク導入に必要な社内規程とは?

  • カテゴリ: テレワーク情報
  • 公開日: 2025/8/20
  • 更新日: 2025/8/20

■ テレワーク導入に欠かせない“ルールの見える化”

コロナ禍をきっかけに一気に広がったテレワーク。柔軟な働き方として注目されましたが、一方で「勤務状況が見えにくい」「業務の質にバラつきが出る」といった課題も浮き彫りになりました。

こうした問題の多くは、社内での“ルールが不明確”であることが原因。テレワークの導入・運用にあたっては、共通認識を持つための社内規程の整備が欠かせません。

本記事では、テレワーク規程の必要性から具体的な内容、注意点、雛形の活用法までを分かりやすく解説します。

1. なぜテレワーク規程が必要なのか

テレワークは場所や時間にとらわれない柔軟な働き方が可能ですが、同時に“見えにくさ”という課題も抱えています。

たとえば

「何時から何時まで働いているのか」

「どうやって上司が成果を把握するのか」

「どこまで会社が費用を負担するのか」

など、ルールが曖昧なままだと、社員の不満やトラブルにつながりかねません。

ここで重要になるのが、社内規程によるルールの明文化です。これがあるだけで、以下のような効果が期待できます。


・社員と会社の間でルールの“共通認識”が持てる

・労働時間や勤怠、業務報告などの基準が明確になる

・セキュリティや費用に関するトラブルを未然に防げる

・管理職が適切な評価・指導を行いやすくなる

・就業規則と連動させることで、法的リスクにも備えられる

・社員が安心して働ける環境が整う


また、就業規則の一部として位置付けることで、労働基準法への対応にもなります。

とくに、時間外労働や在宅中の事故などは、労働法上の判断が問われる場面です。こうした事態に備える意味でも、「曖昧にしないこと」=規程の整備が極めて重要です。

テレワークを「特例」ではなく「標準的な働き方」として浸透させるためには、制度としての裏付け=社内規程が不可欠なのです。

2. 社内規程に盛り込むべき内容

テレワーク規程に盛り込むべき項目は多岐にわたりますが、すべてに共通するのは

「誰が読んでもルールが理解でき、同じように運用できるかどうか」

という視点です。


以下の項目は、必ず含めておきたい基本的な内容です。


対象者の定義:全社員対象か、部署や職種に限定するかを明確に

勤務時間のルール:始業・終業の時刻、報告方法、休憩時間の取り方など

勤怠管理の方法:PCログ、チャット、勤怠ツールなど、記録の方法

業務報告・進捗管理:日報、週報、定例ミーティングの頻度と手段

セキュリティ管理:社用PC使用の義務付け、パスワード管理、VPN利用、外部持ち出し制限など

費用負担のルール:通信費や電気代の支給有無、金額の上限、精算方法

勤務場所の条件:自宅限定か、コワーキングスペースも可とするか

災害時・緊急時対応:災害時の安全確認フロー、業務中断の判断基準など


あわせて、不適切な行動の例(NG行為)も記載すると実効性が高まります。例えば

「カフェなど不特定多数が出入りする場所での機密資料閲覧は禁止」

といった具合です。

社員が安心して働くためにも、管理職が判断しやすくなるためにも、曖昧さを残さない記述がポイントです。

3. 規程作成時の注意点

規程をつくる際に最も大切なのは、

「現場の実情に合った内容にすること」

です。立派な文章を作っても、実際の運用とズレていれば意味がありません。

まず確認したいのは、以下の点です。


法令遵守:労働基準法、厚生労働省ガイドラインに準拠しているか

言葉の明確化:抽象的表現やあいまいなルールは避け、誰が見ても同じ解釈になるように(例:「なるべく報告を行う」→「毎日終業時に必ず報告」)

現場との整合性:規程を作る際には、実際にテレワークを行っている社員や管理職へのヒアリングが有効

運用のしやすさ:チェック体制や報告方法が煩雑すぎると逆効果に

定期的な見直しの仕組み:ツールの変化や社員の意識の変化に対応できる体制を


文書を配布するだけではなく、社内説明会やQ&A集の作成などを通じて周知・定着を図ることも効果的です。

不安を抱える社員の声に耳を傾けながら、規程を“育てる”姿勢が求められます。

また、作った規程を作りっぱなしにしないことも大切です。テレワーク環境や使用ツールは日々変化しています。その変化に対応するためにも、年に1回程度の見直しの仕組みを作っておきましょう。

必要に応じて、社労士や弁護士などの専門家のチェックを受けると安心ですね。

4. 規程例と雛形紹介

初めてテレワーク規程を作る場合、「どこから手をつければいいのか…」と戸惑う方も多いでしょう。

そんなときに便利なのが、官公庁や専門団体が公開している雛形(ひながた)です。

例えば:

・総務省の「テレワーク導入手順書」内のサンプル規程

・厚生労働省の「テレワークガイドライン」に準拠したモデル

・全国社会保険労務士会連合会による雛形PDF

・地方自治体・商工会議所などでも中小企業向けテンプレートがある場合も


これらは無料で公開されており、各項目が網羅的に整理されています。必要に応じて「チェックリスト付き」のものを選ぶのもおすすめです。

ただし、そのまま使うのはNG。以下の点をカスタマイズしましょう。


・自社の業種・職種に応じた勤務形態の違い

・支給する費用の上限や範囲

・自社使用ツールやコミュニケーション手段


雛形はあくまで“たたき台”。参考にしつつ、実情に合った運用可能なルールに落とし込むことが成功のカギです。

5. まとめ:トラブル回避のために

テレワークを円滑に進めるためには、「信頼」や「柔軟性」だけではなく、明確なルールの裏付けが不可欠です。

とくに以下のようなリスクを避けるためにも、社内規程はしっかり整えておきたいところです。


・勤怠の管理が曖昧になり、残業代請求トラブルに発展

・情報漏洩などのセキュリティ事故

・通信費や備品代の負担をめぐる不満・誤解

・上司の指示が伝わらず、業務ミスが発生

・評価が不透明になり、モチベーションが低下


こうした事態を未然に防ぐためには、会社としての「運用ルールの見える化」=テレワーク規程の整備が何よりも重要です。

また、規程は作って終わりではありません。時代や働き方の変化に応じて、定期的に見直し・改善していく姿勢が求められます。

「ルールがあるからこそ、自由に働ける」──そう実感できるテレワーク環境を整えるために、これからテレワークを導入する企業も、すでに導入済みの企業も、改めて規程の見直しを行ってみてはいかがでしょうか。