小規模事業者向けテレワーク導入ガイド:成功事例と実践方法

  • カテゴリ: 最新のワークライフ環境
  • 公開日: 2024/10/28
  • 更新日: 2024/10/8

新型コロナウイルスの影響で、多くの会社がテレワークを始めました。

特に中小企業では、お金や人手不足の影響で、どうやってテレワークを上手く取り入れるか悩んでいる方も多いでしょう。


この記事では、テレワークをうまく導入した会社の例を紹介しながら、中小企業でもできるテレワークの始め方についてご紹介していきます。

1. テレワーク導入での成功事例


テレワークはさまざまな会社・さまざまな業種で成功例が増加しています。

テレワークを導入すると、仕事の効率アップや従業員の満足度がアップする効果に期待できます。


引用元:https://telework.mhlw.go.jp/example/pdf/doc_intro.pdf

1-1. アフラック生命保険の取り組み

アフラック生命保険では、2015年から月1回のテレワークを取り入れ、2018年から週1回の本格的なテレワーク導入が開始。

部門によって異なりますが30%〜70%の出社率を目指しています。

同社がテレワークを始めたきっかけは、働き方を改善したいという思いと、従業員の生活スタイルに合わせた仕事ができるようにしたいという考えからでした。

テレワークを始めてから、通勤時間がなくなり、自分のライフスタイルに合わせて仕事ができるようになったことで、従業員のワークライフバランスが改善されました。


たとえば、ペーパーレス化の推進やフレックスタイム制度の導入が挙げられます。

在宅勤務環境の整備としては、自宅での活用のためノート PC・USB シンクライアントやタブレットやスマートフォンの配布を行いました。


加えて、在宅勤務環境整備手当や維持手当を支給することでテレワークを促進。

全社員向けeラーニングや新入社員研修、管理者向けマネジメント研修を実施しました。

労働状況を可視化するダッシュボードの導入・1on1トレーニングを通じて、テレワーク環境下での適切な評価と管理を実現しています。


リモートワーク導入の結果、法定外労働時間が 2023 年は 9.6 時間に、2016 年と比較し41.1%の減少にまで到達。

時間や場所にとらわれない働き方のおかげで、20〜30代女性の離職率が半減する、という結果が得られました。

1-2. 株式会社スタッフサービス・クラウドワークの事例

株式会社スタッフサービス・クラウドワークは、重度身体障がい者を対象にテレワークによる雇用創出を実現している先進的な企業です。

同社のテレワーク導入は、前身であるスタッフサービスグループの特例子会社での経験から始まりました。

通勤がネックで意欲やスキルがあるにもかかわらず、採用できない状況に課題感を抱いたことがきっかけとなり、2016年1月にテレワークによる完全在宅就労での雇用機会の提供を開始。


2024年3月1日現在、1道2府35県で507人の雇用を創出するまでに成長。

特徴として、フレックス制と充実した環境整備が挙げられます。

週30時間、9:00~19:00の間で勤務時間を調整可能とし、通院や生活介助への配慮。

また、全社員にパソコン本体とモニター・WEBカメラなどを貸し出し、障がいに応じて追加の機器提供も行っています。


孤独感の解消と業務効率の向上を図るため、5〜15人のチーム制を導入し、1日3回の定時ミーティングも実施。

ここでは進捗確認と健康チェックや雑談の時間も設けることで、チームの一体感を作り出します。

さらに、年1回の「エリアミーティング」を開催し、最大100名規模で実際に顔を合わせる機会を設けることで、働く意欲向上と定着率向上につなげています。


同社は、テレワーク導入や社内環境の整備により、高い成果を上げています。

入社1年目の職場定着率は97.3%(2023年6月時)と、一般企業の身体障がい者の定着率60.8%を大きく上回っています。

また、業務の多様化も進み、導入当初はリスト作成のみだった業務が、現在は三十数種類にまで拡大。

さらには、約86%の従業員が「生活と仕事のバランスがとれている」と回答しており、ワーク・ライフ・バランスの実現に成功していることがわかります。


株式会社スタッフサービス・クラウドワークの取り組みは、重度身体障がい者のテレワーク就労のモデルケースです。

適切な環境整備と丁寧なコミュニケーション、そして従業員一人ひとりの特性に配慮したきめ細かな対応が、その成功の鍵となっています。

1-3. 東洋ハイテックの取り組み

粉体製造機器を扱う中小企業、東洋ハイテック株式会社は、コロナ禍をきっかけに完全テレワークへ移行し、導入から4年の間に様々な改善を重ねてきました。

この取り組みにより、経費の大幅な削減や新卒採用のエントリー数456%増加など、素晴らしい成果を上げています。


テレワーク導入の主な目的は業務改善と効率化です。

同社は従来からオフィス勤務にこだわる必要はなく、業務効率が高ければ就業場所を問う必要はないと考えていました。

しかし、働き方の自由度を高めることで、女性の活躍促進・人材確保・人材流出防止につながると期待。

また、従業員の通勤時間削減・生産性向上・オフィスや通勤にかかるコスト削減なども視野に入れての導入を試みます。


導入の経緯としては、当初2020年7月に東京支店での試行を経て、同年10月から全社実施を計画。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により2020年3月に前倒しで導入を開始します。

以降、感染状況に関係なく、テレワークを基本とした勤務体系の継続を実現。

2020年7月から2023年6月までの調査によると、出社率は10%未満を継続しており、在宅勤務が定着していることがわかります。


テレワーク推進のための取り組みとして、完全ペーパーレス化やWEB会議ソフトの使用によりスムーズな業務を実現します。

たとえば、社内書類の完全電子化・モバイル環境での事務業務遂行・幹部によるスマートフォンでの承認作業などを可能にしました。


また、クラウドサーバー・VPN接続の導入・データ共有・同時編集可能なPDFソフトの導入・請求書や郵送物の電子化などの環境整備も同時に実行。

さらに、データ化した資料を効率的に探せる検索ソフトを導入します。


勤務地という概念をなくし、いつでもどこでも仕事ができるようにインフラの整備を実現。年度初めに「事業発展計画書(経営計画書)」にて、テレワークが"今後の働き方"であると明言し、テレワークを前提とした業務や組織づくりを指示します。

労務管理面では、在宅勤務手当の導入や意識差を埋めるための研修など、新たな施策を打ち出しています。

社員の現状把握のため、年2回以上の上司との個別面談する機会を設け、業務に関する不安点や将来設計・キャリアプランの確認。

また、テレワークに必要な機器は申請することで会社が購入し、貸し出しをします。


テレワーク定着の成果として、時間外労働時間の削減や有給取得日数の向上。

さらには、毎年行っているストレスチェックで、従業員満足度が全社的に上昇します。


また、営業部門ではWEB面談の導入によりクライアントとのコミュニケーションが取りやすくなり、一日あたりの面談回数が増加につながったのです。

企業成長への影響としては、通勤費や水道光熱費の削減・地代家賃の削減などの経費削減により利益率が上がり、会社の実績向上に影響がおよびます。

このように、東洋ハイテック株式会社のテレワーク導入は、多方面にわたって大きな成果を上げており、今後のさらなる発展が期待されます。

2. テレワーク導入の実践方法


中小企業におけるテレワークの導入方法について、以下のステップで進めることをお勧めします。

これにより、効果的にテレワークを導入し、経営課題の解決につなげることが可能です。

2-1. 導入の準備

まず、導入準備の段階では、テレワーク導入の目的を明確に定義が重要。

生産性向上・コスト削減・従業員のワークライフバランス改善など、具体的な目標を設定します。

同時に、経営層や従業員との間で、テレワーク導入の意義と目的について共通認識を共有することも必要です。

2-2. インフラとツールの選定

次に、必要なインフラとツールの選定に移ります。

通信ツール・データ共有システム・セキュリティ対策などの、テレワークに必要な技術的要件を確認し、適切なリソースを整備。VPNの設置やクラウドストレージの利用など、より具体的な準備を進めます。

2-3. パイロットプロジェクト

準備が整ったら、パイロットプロジェクトの実施を試みます。

全社展開の前に、特定の部署やチームでテレワークを試験的に導入し、その結果を評価。

従業員からのフィードバックを収集し改善点を洗い出すことで、本格導入時の課題を事前に把握することができます。

2-4. 全面的なロールアウト

パイロット結果を踏まえ、全社的なテレワーク導入計画を策定し、ロールアウトを進めます。

この段階では、技術的サポートの提供や運用面での継続的な改善が非常に重要です。

定期的な評価とアップデートにより、テレワークの効果を最大化に導きます。

2-5. 継続的な評価と改善

最後に、テレワーク導入後も継続的な評価と改善を行います。

定期的に効果測定し、必要に応じた改善策を講じます。

また、社会情勢や技術の変化に応じて、テレワークポリシーを柔軟に見直し、常に最適な働き方は何か追求していきます。


これらのステップを通じて、中小企業でもテレワークを効果的に導入し、多くのメリットを感じられることになるでしょう。

経営層と従業員が一体となって取り組むことがテレワーク導入の成功への第一歩となるのです。

3. まとめ


テレワーク導入は小規模事業者にとっても大きなチャンスとなり得ます。

あなたの会社では、どのような準備から始められますか。

従業員との対話やインフラ整備・試験運用など、できることから一歩ずつ進めてみませんか。

テレワークで、より柔軟で効率的な働き方を実現し、企業の成長につなげられるかもしれません。


皆さんも、ぜひこのガイドを参考に、自社に合ったテレワークの形を見つけてみてはいかがでしょうか。