
テレワーク環境整備に補助金を活用する方法〜中小企業がコストを抑えて導入・定着させるために〜
- カテゴリ: 最新のワークライフ環境
- 公開日: 2025/7/28
- 更新日: 2025/7/15
テレワークは、働き方改革の一環として、また感染症対策として、多くの企業が注目し導入を進めている取り組みです。しかし、制度や設備の整備には一定の費用がかかり、特に中小企業にとっては「導入したいけれど予算的に難しい」と感じているケースも少なくありません。
こうした課題を解決するために、国や自治体ではテレワーク環境整備に活用できる補助金制度を複数設けています。うまく活用すれば、初期コストを大幅に抑えて導入が可能となり、従業員の働きやすさや企業の生産性向上にもつながります。
代表的なものに「IT導入補助金」「業務改善助成金」「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」などがあり、年度ごとに内容や要件が更新されます。特に厚生労働省や中小企業庁が管轄する制度は、中小企業向けに手厚く設計されていることが多く、申請のハードルも比較的低めです。
また、自治体単位でも独自の補助金制度を用意している場合があるため、企業所在地の市区町村・都道府県の公式サイトも確認しておくことが重要です。国の制度と地方自治体の制度を併用できるケースもあり、活用次第では負担を最小限に抑えた導入も可能になります。
1. 補助対象経費の例

テレワーク環境を整えるには、パソコンやネットワーク機器の導入だけでなく、クラウドツールの契約や労務管理体制の見直しなど、さまざまな費用が発生します。補助金の種類によって対象経費は異なりますが、以下のような費用は共通して補助の対象になることが多いです。
まずは、ハードウェアの導入費です。ノートパソコン、Webカメラ、ヘッドセット、モバイルWi-Fiルーターなど、社員が在宅で業務を行うために必要な機器が対象になります。リース契約や中古品の購入は対象外となる場合もあるため、申請前に確認が必要です。
次に、ソフトウェアやクラウドサービスの導入費用も補助の対象になります。例えば、Web会議システム、勤怠管理クラウド、プロジェクト管理ツール、チャットアプリなどの契約・導入にかかる費用が該当します。導入支援業者と連携して利用するケースでは、導入サポート費用も補助対象になることがあります。
さらに、労務管理体制の整備費用も見逃せません。就業規則の改訂、テレワーク導入マニュアルの作成、労務管理ツールの導入など、法令順守のための整備にかかる費用も補助の対象になる場合があります。
このほか、在宅勤務に必要なインフラ整備、セキュリティ対策、VPN構築など、企業の状況に応じてさまざまな費用が対象になります。補助金制度ごとに「対象となる経費」が詳細に定められているため、必ず事前に公募要領を確認するようにしましょう。
2. 申請の流れと注意点

補助金を活用するには、制度ごとに定められた申請手続きに沿って進める必要があります。ここでは、一般的な申請の流れと注意点を紹介します。
まず、情報収集が第一歩です。年度や制度によって申請期間や要件が変わるため、最新の公募要領を確認しましょう。中小企業庁や厚生労働省、各地方自治体の公式サイトには、詳細な要件・対象者・スケジュールが掲載されています。
次に、申請書類の作成です。会社概要、テレワーク導入の目的、導入内容、経費の内訳などを記載し、補助金の申請フォーマットに沿ってまとめていきます。必要書類には、法人登記簿謄本や納税証明書、見積書などが含まれることが多いため、早めに準備を進めることが大切です。
申請書が完成したら、オンラインまたは郵送で提出します。申請期間が短く設定されていることもあるため、スケジュール管理を怠らないようにしましょう。書類に不備があると受理されず、再提出となるケースも少なくありません。
申請が受理され、審査を通過すると、交付決定が通知されます。この交付決定通知を受けてからでないと、補助対象となる事業を開始できない点には特に注意が必要です。交付決定前に機器を購入したり契約を締結してしまうと、補助の対象外となってしまいます。
事業実施後は、実績報告や支払い証明の提出が求められます。領収書や納品書など、経費を証明する書類はすべて保管し、報告時に提出できるように整理しておくとスムーズです。
3. 実際の成功事例紹介

補助金を上手に活用して、テレワーク導入に成功した中小企業の事例も多く報告されています。ここでは、2つの事例を紹介します。
東京都内のIT企業では、社員数15名規模の会社が、コロナ禍をきっかけに全社員テレワークへの移行を検討しました。しかし、全員分のノートPCやヘッドセットを揃えるだけでかなりの費用がかかる見込みでした。そこで「IT導入補助金」を活用し、クラウド型勤怠管理システムの導入費と合わせて、約80万円の支援を受けることに成功。担当者は「補助金がなければ、ここまでスムーズに環境を整えられなかった」と語っています。
また、関西の製造業では、社内に一部の業務しかテレワークに適していない状況だったものの、管理部門だけでも柔軟な働き方を導入しようと「働き方改革推進支援助成金」を申請。就業規則の見直しや業務マニュアルの作成を外部コンサルタントに依頼し、その費用を助成対象とすることで、制度整備をスムーズに行うことができました。
どちらの企業も共通しているのは、「自社だけで申請を進めるのではなく、専門家のサポートを受けた」という点です。商工会議所や中小企業診断士、社会保険労務士などに相談することで、制度の選定や書類作成が円滑に進み、結果として成功につながったという声が多く聞かれます。
4. まとめ:補助金活用のコツ
テレワークの導入や環境整備にあたり、補助金制度は非常に心強い支援策となります。しかし、活用の成否を分けるのは「情報収集の早さ」と「申請準備の丁寧さ」にあります。制度の募集は突然始まり、短期間で締切られることも多いため、常にアンテナを張っておくことが重要です。
また、補助金の活用は「導入コストを抑えること」が目的であり、実際に社員が使いやすく、継続して活用される環境を整えることが本質的なゴールです。そのためには、導入後の運用体制やサポート体制まで含めて、計画的に整備していくことが求められます。
社内に補助金制度に詳しい担当者がいない場合は、地域の商工会議所や中小企業支援センター、認定支援機関などに相談することで、具体的なアドバイスや申請サポートを受けることも可能です。
テレワークの導入は、一時的な対応にとどまらず、中長期的に企業の柔軟性・競争力を高めるための投資でもあります。補助金を上手に活用して、負担を抑えながら未来志向の働き方改革を進めていきましょう。