テレワーク導入時に注意すべき5つのポイント

  • カテゴリ: 最新のワークライフ環境
  • 公開日: 2025/6/23

テレワークは働き方の選択肢を広げる一方で、導入にはさまざまな課題があります。特に人事担当者としては、社員が安心して働ける環境を整えることが大切です。ここでは、テレワークを導入する際に注意すべき5つのポイントをご紹介します。

1. コミュニケーションの確保


テレワークでは、社員同士が顔を合わせる機会が少なくなります。そのため、情報共有がうまくいかない、相談しづらいなどの問題が起こりがちです。

対策としては、以下のような工夫が効果的です。

・チャットツールやWeb会議ツールの活用(例:Slack、Zoom、Teams)

・毎日の「朝会」や週1回の定例ミーティングの実施

・雑談できるオンラインスペースの設置(バーチャルランチなど)

・上司との1on1面談で、フォローアップをする仕組み作り

実例:大手IT企業の事例
あるIT企業では、テレワーク中に「孤立感」や「連携不足」が課題となりました。そこで毎朝10分間のオンライン朝会を導入。社員がその日の予定や気分をシェアすることで、自然と声をかけやすい雰囲気ができました

「話しやすい雰囲気づくり」が、チーム全体の安心感や一体感につながります。
ある中小企業では、「週1の全社オンライン雑談会」を実施し、部門を超えた交流が生まれたという声もあります。

2. セキュリティ対策


自宅やカフェなど、オフィス以外の場所で働くテレワークでは、情報漏えいや不正アクセスのリスクが高まります。セキュリティ対策は必須です。


導入時のポイント:

・VPN・ウイルス対策ソフト・端末制御の導入

・業務PC貸与(USB・外部クラウドの使用制限付き)

・年1〜2回のセキュリティ研修を実施し、リスク意識を高める


実例:広告代理店A社の失敗例
A社では、社員が個人PCで業務を行い、誤って顧客データをクラウドに公開してしまいました。これをきっかけに、業務専用PCを貸与し、社内システムへはVPN経由でしかアクセスできないように変更しました。

BtoB企業では、取引先から「セキュリティ体制の開示」を求められることもあるため、社内体制の明文化も重要です。

「うちは大丈夫」と思わず、基本をしっかり守ることが大切です。

3. 勤怠管理の重要性


出社していないと、誰が何時から働いているのかが見えにくくなります。そのため、働きすぎや逆にサボりの問題が起こることも。

正確な勤怠管理のために、以下の方法が役立ちます。

・クラウド型の勤怠管理システムを導入

・「始業・終業時にチャットで報告」などのルールを明確に

・日報や業務記録を残す仕組みづくり

・フレックスタイム制度や裁量労働制の検討


実例:ベンチャー企業B社の対応例
B社では、テレワーク中の「働きすぎ」が問題になりました。業務に集中するあまり、休憩を取らず10時間以上働いてしまう社員が出ていたのです。これに対し、同社は「始業・終業・休憩取得時にチャット報告するルール」を導入し、上司がこまめにチェックするようにしました。

長時間労働を防ぐため、勤務時間に上限を設け、アラートを出す仕組みを設けた企業もあります。

法律上も、企業は労働時間をしっかり把握する責任があります。管理体制を整えておきましょう。

4. 生産性の維持方法


「本当に仕事をしているのか?」「成果が出ているのか?」と不安に思う声も多いテレワーク。成果が見えづらくなる分、評価や目標管理がカギとなります。

生産性を維持するための工夫は次の通りです。

・目標管理(OKR(Objectives and Key Results)やKPI(Key Performance Indicator))を取り入れる

・業務の進捗を共有できるツールを使う(Trello、Backlogなど)

・業務ごとに「いつまでに」「何を」達成するか明確にする

・タイムマネジメントや自己管理力向上の支援

実例:製造業C社の導入例
間接部門にテレワークを導入したC社では、「何を基準に評価すればよいのか」が課題でした。そこで、部署ごとに「月間のKPI(例:問い合わせ対応件数、資料作成数など)」を設定し、目標に対する達成率を可視化したところ、評価の透明性が上がり、社員のモチベーションも向上しました

あるITベンチャーでは、業務の自己申告制をやめ、GitHubやNotionで成果物を公開することで「見える評価」を実現しています。
また、会議の時間を短くする工夫や事前の議題共有なども、効率アップに効果があります。

5. 労務管理上の注意点


テレワークでも、企業には変わらず労務管理の責任があります。とくに以下の点には注意が必要です。

・労働時間の把握(労働基準法で義務づけられています)

・在宅勤務にかかる費用(通信費・光熱費・備品など)の取り扱い

・テレワーク勤務規程の整備と社員への周知

・長時間労働の防止と、メンタルヘルスへの配慮(例:ストレスチェック)

実例:中小企業D社の法令違反寸前事例
D社では、テレワーク導入後、勤怠を自己申告にしていました。しかし、実際の勤務時間と報告内容に差がある社員がいたため、労働基準監督署から是正勧告を受ける事態に。D社はその後、PCのログや打刻と連動した勤怠記録を導入し、記録を厳密に管理するようになりました。

総務省の調査によると、テレワーク中に「働きすぎによるメンタル不調」を訴えるケースも増えているため、心のケアは今後ますます重要になります。

「紙の書類があるから難しい」「制度が整っていない」などの理由で曖昧にしてしまうと、後々トラブルにつながることもあります。

6. まとめ

1.コミュニケーションの確保:定例ミーティングやチャット活用で孤立を防ぐ

2.セキュリティ対策:VPNや端末管理、社員教育の徹底

3.勤怠管理の重要性:打刻ルールや勤怠システムで労働時間を把握

4.生産性の維持方法:目標管理や進捗の見える化で成果を可視化

5.労務管理上の注意点:就業規則の整備と健康面のフォロー体制づくり



テレワーク導入には、多くの工夫と準備が必要です。ただ制度を作るだけでなく、現場の実態にあわせた運用ルールを整えることが大切です。


「社員が孤立しないための仕組み」

「情報漏洩を防ぐ体制」

「生産性と健康を守る管理方法」


これらをバランスよく整えることで、社員も企業も安心してテレワークを活用できます。ぜひ、今回の事例を参考に、自社に合った対策を進めてみてください。

人事担当者としては、「働きやすさ」と「会社としての責任」の両立が求められます。

今回ご紹介した5つのポイントを参考に、自社にあったテレワーク制度を整えていきましょう。