
中小企業の離職率は?離職率を下げるための対策についても紹介
- カテゴリ: その他人事
- 公開日: 2024/1/8
離職率の高さが社会問題になっています。
そのなかでも特に深刻化しているのは、中小企業でしょう。
中小企業の離職率が高い原因はどこにあるのでしょう。
大企業に比べて好条件で人材雇用ができないからと考えている人もいるかもしれません。
しかし、本当にそうでしょうか。
離職率が高くなる理由は、もっと別の場所にあるのかもしれません。
ここでは、中小企業の離職率について解説します。離職率が高くなる理由・対策についても紹介するので、参考にしてください。
1. 新卒者の離職率
離職率が高いのは中小企業だけでしょうか。
実はそうではありません。現在、全体的に離職率が高まっており、社会問題になっているのが現状です。
そこで全体における現在の離職率について解説します。規模別・業種別に紹介するので、参考にしてみてください。
1-1. 規模別
まずは事業所規模での新卒者3年以内の離職率を見てみましょう。
・事業所規模:5~29人 高卒 51.7% / 大卒 48.8%
・事業所規模:30~99人 高卒 43.4% / 大卒 39.4%
・事業所規模:100~499人 高卒 35.1% / 大卒 31.8%
・事業所規模:500~999人 高卒 30.1% / 大卒 29.6%
・事業所規模:1,000人以上 高卒 24.9% / 大卒 25.3%
平成4年10月28日公布
※参考:厚生労働省[https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00005.html]
事業所規模が小さくなるにつれて、離職率が高くなっていることがわかります。
中小企業は常勤している従業員数が300人以下とされていることから、上記一覧表の上から3段目あたりまでです。
500人以上の事業所と比べた場合、離職率がかなり高いといえます。
1-2. 業種別
それでは業種別ではどのくらいの離職率があるのでしょう。
こちらも新卒者3年以内の離職率を確認してみます。
なお一覧表で確認するのは、離職率が高い上位3つの業種のみです。
・業種:宿泊・飲食サービス業 高卒 60.6% / 大卒 49.7%
・業種:生活関連サービス・娯楽業 高卒 57.2% / 大卒 47.4%
・業種:教育・学習支援業 高卒 53.5% / 大卒 45.4%
平成4年10月28日公布
※参考:厚生労働省[https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00005.html]
これ以外では医療・福祉業の離職率が高卒で45.2%、大卒で38.6%と高くなっています。
この一覧表からわかることは人と接することの多いサービス業での離職率が高くなっているということでしょう。
接客業を含めたサービス業は、さまざまな顧客との会話・対応が必要です。
顧客のなかにはお世辞にも良いとはいえない人も存在します。
そのような人たちとのかかわりのなかでストレス・仕事に対する不満などが積み重なり、結果的に離職率を高めているのかもしれません。
2. 離職の理由
事業所規模・業界におけるそれぞれの離職率についてみてきました。
それでは、離職する人たちはどのような理由を持っているのでしょう。
離職者の多くが抱える主な理由は以下の3つです。
・人間関係(ハラスメントを含む)
・労働環境(待遇を含む)
・キャリアアップ(独立を含む)
それぞれの理由について解説するので、参考にしてください。
2-1. 人間関係(ハラスメント)
離職の理由として最も多くあげられるのは人間関係でしょう。
業種別の離職率から判断できることは、職場以外の人とのかかわりが多い仕事・サービス業は離職率が高い点です。
ただでさえストレスの多い仕事に従事しているのに、職場での人間関係にも問題があれば、多くの人は「辞めたい」と思うかもしれません。
人間関係にはハラスメントも含まれます。
上司・先輩からの嫌がらせを受ければ、それが追い打ちになって退職を考える人もいるでしょう。
また、心のバランスを崩して退職を余儀なくされる人も少なくありません。
2-2. 労働環境(待遇)
労働環境も離職する理由の1つとしてあげられます。
有休がもらえない、またはあっても取ることが難しいなどの環境では職場に嫌気がさして退職する人も出てくるでしょう。
有休消化ができない場合、中小企業のなかにはその分を給与という形で買い上げるシステムを取り入れているところもあります。
しかしその一方で消化できなかった分については消滅するところも多くあり、それが離職率を高めている可能性は否めません。
また、給料面についても同様のことがいえます。
入社してから何年も上がらなければ、もっと給料の良い職場へ移ろうと考える人は当然出てくるでしょう。
2-3. キャリアアップ(独立を含む)
離職率の際、大卒と高卒にわけて紹介しました。
その結果、大卒よりも高卒のほうが離職率が高い結果となっています。
その理由の1つとして、キャリアアップがあげられるでしょう。
自分自身のさらなる可能性を求めて、新たな職種や大企業への挑戦をしたくなるのです。
この裏側には、「現在の職場では自分の可能性を試すことができない」「キャリアアップが望めない」などの理由があることを忘れてはなりません。
このような希望を満たせるような環境づくりが求められているということです。
3. 離職率を下げる対策
離職する人たちの理由について見てきました。
理由がわかれば、対処方法も自ずと見えてきます。
おすすめの対策は以下の5つです。
・ヒアリング
・風通しの良い環境づくり
・多様な働き方の導入
・裁量権の付与
・挑戦できる環境の整備
それぞれの対策について解説するので、参考にしてください。
3-1. ヒアリング
離職率の低下を目指すためには、話を聞かなければいけません。
従業員がどのような点に不満を感じているのか、どんなふうに改善して欲しいと思っているのかなどを知らなければ対策は立てられないでしょう。
ヒアリングは1度や2度では不十分です。
警戒してなかなか心の内を言葉にしない従業員もいるかもしれません。
従業員の本音を知るには、時間をかけることが大切です。
また、ヒアリングといっても会話だけではありません。
なかには思い・考えを言葉にすることが苦手な人もいるでしょう。
そのような人の声も聞き逃さないように、アンケートなども行う必要があります。
徹底したヒアリングで、全従業員の心の声・本音を知りましょう。
3-2. 風通しの良い環境づくり
離職率を下げるためには、従業員の話を聞くだけでは不十分です。
時間をかけて集めた本音をもとに、職場環境などを改善していかなければいけません。
ここで注意したいのは、経営陣の改善案と従業員の求めている改善案には大きな溝がある点です。
多くの場合、従業員の希望に沿って行った経営陣による改善案は失敗に終わります。
その理由は、経営陣が従業員の目線で考えていないからです。
その一方で経営陣が従業員の立場に立って、さまざまな案を出すことは困難でしょう。
一人ひとりの環境下で仕事をしていないのですから、具体的な改善案が編み出せるはずはありません。
現場のことは現場に聞き、対策についても現場の人たちに考えてもらう必要があります。
それが一番理にかなった方法です。
ただし、始めはなかなか自分たちの考える案を言葉にして伝えてくれないかもしれません。
前例がなければなおさら、協力してくれる従業員は少ないでしょう。
遠回りに感じるかもしれませんが、風通しの良い環境づくりから始める必要があります。
ともに会社を成長させていくための意見交換など場を何度も設け、誰もが自分のアイデアを発表できる環境を作りましょう。
3-3. 多様な働き方の導入
多様な働き方の導入も、離職率を低下させる対処法として最適です。
従業員のなかには家庭の事情で離職を余儀なくされる人も少なくありません。
そのような人たちのためにリモートワークや短時間勤務など、働き方の選択肢を作ってあげると良いでしょう。
家庭の事情が落ち着けば、再びこれまで通り会社で仕事をしてもらえます。
3-4. 裁量権の付与
キャリアアップを目指して離職する人には、裁量権を付与する方法が有効かもしれません。
中小企業の場合、管理職が仕事の進め方などの指示を出してしまいがちです。
前例踏襲も相まって、徹底した方法論の伝授をしてしまうのはありがちなパターンといえます。
しかし、キャリアアップを目指す若い従業員にとってこのような職場環境は窮屈でしかありません。
仕事へのモチベーションが上がらず、離職してしまうのです。
優秀な従業員には裁量権を付与すると良いでしょう。
特に自主性の高い従業員は、積極的にリーダーなどに抜擢していくと、さらなる成長が期待できます。
3-5. 挑戦できる環境の整備
キャリアアップを目指す従業員のなかには、ほかの違った仕事がしたいと思うケースも含まれています。
仕事にマンネリを感じて辞めてしまうのです。
従業員のキャリア設計を確かめる必要があります。
そのうえで、必要となる経験・知識が得られる環境を整えてあげましょう。
社内でそのような環境が整備できれば、優秀な従業員が育ちます。
会社にとっての貴重な財産にもなり、離職率の低下も期待できるのでおすすめです。
4. 離職率を下げたいなら意見交換の場を設けよう
中小企業における離職率について解説しました。
中小企業に限らず、多くの企業・業界では離職率が増加しています。
そのため深刻な人材不足に陥り、会社が立ち行かなくなるケースも少なくありません。
離職率を下げたいのなら、まずは意見交換の場を設けましょう。
ただ単に話を聞くだけでは不十分です。
問題点を浮き彫りにし、それをどのように解決していくかについても従業員とともに話し合って考えてください。
上司・部下関係なく、全従業員で会社を成長させていくという認識が芽生えれば、離職率は下がっていくでしょう。