
【インボイス制度】外注依頼をしている人必見!外注先がインボイス発行事業者じゃないとどうなる?解説します
- カテゴリ: その他人事
- 公開日: 2024/2/12
2023年10月1日にインボイス制度が施行されました。
この制度により外注側が消費税の支払税額控除の金額を正しく計算するためには、取引先からのインボイス(適格請求書)の発行をしてもらうことが必要となります。
仕事を外注している人にとっては、取引相手がインボイス発行事業者かどうかで処理方法が変わるため慎重に作業をする必要があります。
この記事ではインボイス制度導入による外注費の取り扱いの影響や、取引先がインボイス発行事業者ではなかった場合どんな対応をしたら良いのか、外注している側が知っておくべきことを詳しく解説していきます。
目次
1. インボイス制度における外注費の影響とは
企業が外部の事業者に対し仕事を外注している場合、その費用は外注費として経費に組み込むことができ、外注先への支払いにかかった消費税額を引く「仕入税額控除」の適用を受けることができます。
インボイス制度導入後、外注側がこの仕入税額控除を受けるためには、外注先が発行した適格請求書(インボイス)を7年間保管する必要があります。
では外注している人にとって、インボイス制度の導入はどのような影響をもたらすのでしょうか?
・外注先が免税事業者だった場合、外注側は納める消費税分の負担が増加する可能性がある
・外注先に適格請求書発行事業者と免税事業者が混在していると、経理処理の作業負担が増えることが懸念される
適格請求書が発行できるのは適格請求書発行事業者である課税事業者のみとなります。
そのため外注先が免税事業者(適格請求書を発行できない事業者)だった場合、適格請求書の受領ができず外注側は仕入控除を受けられないことになります。
つまり外注している人は免税事業者との取引価格の消費税分は自社で負担しなければならないということです。
また経理処理においても外注先が複数ある場合には、適格請求書発行事業者か免税事業者かの確認を行い、請求書を仕分けしたうえでそれぞれに対応した処理を行う必要があります。
処理の方法が複雑になるためミスが生じやすくなり、結果間違った納税申告に繋がる可能性もゼロではありません。
経理担当者はやるべき業務が複雑化し、負担が増えることで作業効率低下の影響が出てくるでしょう。
2. 外注先がインボイス発行事業者か免税事業者かで何が変わる?
外注先が適格請求書発行事業者か免税事業者かによって、外注している側は何が変わるのでしょうか。
インボイス制度導入後も、しばらくは経過措置も取られるためそれも合わせて確認していく必要があります。
2-1. 外注先が適格請求書発行事業者の場合
外注先が所轄税務署長の登録を受けた課税事業者であれば適格請求書を発行してもらえるため、外注している側は仕入税額控除の適用を受けることができます。
また以前までは税込み支払額が3万円未満の場合、帳簿の保存のみで支払額控除ができましたが、インボイス制度導入後はこの特例はなくなります。
そのため取引額が3万円未満だった場合でも、適格請求書を発行してもらう必要があるため注意が必要です。
ただし、小規模事業者(基準期間の課税売上高が1億円以下、もしくは特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者)に限り税込支払額が1万円未満であれば、帳簿の保存のみで支払額控除が認められる「少額特例」が経過措置として設けられています。
少額特例は免税事業者も対象になっているため、この特例に関しては適格請求書の発行は不要となります。
2-2. 外注先が免税事業者だった場合
免税事業者は適格請求書発行事業者ではないため、適格請求書を発行してもらうことはできません。
そのため、免税事業者に外注している人は仕入税額控除の適用は受けられず、取引額の消費税額を負担することになります。
ただし、インボイス制度導入後すぐに仕入額控除ができなくなるわけではありません。
外注している人の負担軽減対策として、インボイス制度導入後3年間は仕入額相当額の80%を、さらにその後3年間は50%を仕入税額とみなし、控除できる経過措置が設けられています。
いずれにせよ外注する側は取引先に対し、今までと同額の契約内容で消費税分を払い続けるのか、契約の見直しを図るのか今後の取引内容を検討する必要がでてくるでしょう。
参考:国税庁(免税事業者等からの仕入れに係る経過措置)
3. 外注先が免税事業者だった場合の対応について
インボイス制度導入後6年間の経過措置が取られているとはいえ、2029年10月1日からは全額控除が不可となります。
外注先が免税事業者だった場合の対応方法、契約を見直す際に知っておくべきことについて説明していきます。
3-1. 外注先に課税転換を求める
まずは外注先に課税事業者になってもらうという方法です。
外注先が適格請求書発行事業者になれば適格請求書を発行してもらえるため、外注している人は仕入税額控除の適用を受けることができます。
しかし相手にとっては今まで払っていなかった消費税を支払うということになるため、その分の取引価格の引き上げを交渉される可能性があるかもしれません。
外注先へきちんと説明をし、話し合いのうえ制度への対応を行ってもらい、双方の納得のいく取引額を決め契約をする必要があります。
3-2. 消費税相当額を減額にした取引額を提示する
外注先が課税転換を拒むケースも考えられます。
その場合は外注している人の支出を少しでも抑えるために、消費税相当分を契約している額から差し引いた金額に変更をする方法もあるでしょう。
しかしこれは相手にとって売上や利益が減少することになるため、応じてもらえないこともあるかもしれません。
ここで気を付けないといけないことは、外注先が取引価格に応じないからといって、外注側が一方的に取引停止などをしてしまうと法律に抵触するおそれがあります。注意してください。
3-3. 双方でそれぞれ価格を見直す
消費税額をどちらかが負担するのではなく、双方が少しずつ支払うことでそれぞれの負担を軽減するという方法もあります。
消費税分10%全てを取引額から値引きするのではなく、例えば5%の値引きになるような価格で見直し契約を交わすなど、お互いに痛み分けという形で契約する方法も考えられるでしょう。
3-4. 取引停止にする
お互い話し合いのうえ、合意が得られない場合は取引を停止することも選択肢に入ってきます。
インボイス制度に合わせ、今までの取引内容を検討したうえで必要に応じて取引を解消したり、何度かの交渉の上合意が得られず取引を終了させるという行為は、「契約自由の原則」に該当するため法律違反にはなりません。
ただし取引継続を理由に免税事業者に対し不当な条件を一方的に提示し、結果として取引停止に至った場合は法律違反になるおそれがあります。
4. 免税事業者の対応における注意点
インボイス制度により、今後免税事業者である外注先に対し取引条件の見直しや、場合によっては取引停止という決断をすることもあるでしょう。
ここで外注する人が気を付けることは下請法や独占禁止法についてです。
外注先に対し適格請求書発行事業者になるよう要請する行為や、取引価格の引き下げを交渉する行為自体は法律上何の問題にもなりません。
しかし、一方的に通告を行ったり交渉をせずに取引価格を引き下げるなどの行為は、下請法や独占禁止法では禁止されています。
また、取引先が適格請求書発行事業者になった際、相手側から価格交渉を打診されても明示的な協議をせずに価格を据え置く行為も問題になり得ます。
ここで外注している人が知っておくべきことは「公正な手続きを得て決めた取引内容か」「優位な立場を濫用して不当な条件を提示していないか」ということです。
交渉の進め方によっては下請法や独占禁止法に該当してしまう可能性もあるため、外注している側は法律をしっかり理解したうえで正しい対応をすることが重要です。
参考:公正取引委員会(よくある質問:独占禁止法)
参考:中小企業庁(インボイス制度後の免税事業者との取引に係る下請法等の考え方)
5. まとめ
インボイス制度導入により、経理処理の方法や外注先への対応など様々な面で影響が出てきます。
特に外注先が免税事業者だった場合はお互いの関係性を損なわないためにも、今後の契約内容は外注側がしっかりと方針を決めておく必要があります。
外注している人はインボイス制度や法律の内容を理解したうえで、消費税の扱いをどうしていくのか早急に検討をしていきましょう。